エクセルの請求書作成に時間がかかる理由と、効率化できる工程

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毎月の請求書づくりに丸一日かかっている、という相談をよく受けます。エクセルの操作が遅いわけではなく、時間を食っているのは工程の中の決まった数か所です。請求書の作成を7つの工程に分解し、自動化できる所と人がやるべき所を工程ごとに線引きします。

「エクセルが面倒」なのではなく、工程が多い

請求書の作成に時間がかかる会社に話を聞くと、「エクセルだからしかたない」と言われることが多いのですが、実際に手を動かしているところを見せてもらうと、原因はソフトではありません。1通の請求書を出すまでに、確認と入力が7回ぶん積み重なっていることが原因です。

1通あたりの各工程は、どれも数分で終わります。ところが20通あれば20倍になり、しかも月末の数日に集中します。1回あたりが短いために「面倒だが仕方ない作業」として扱われ、どこを削ればよいのかが見えなくなっているのが、この作業のやっかいなところです。

まず工程に分けます。分けてしまえば、機械に渡してよい所と、人が見なければならない所は、はっきり分かれます。

請求書ができるまでの7工程

工程1 前月ファイルを複製し、日付と番号を書き換える

ほとんどの会社がここから始めます。複製して、発行日・支払期限・請求書番号を書き換えます。作業自体は1分で終わりますが、複製元が正しいかの確認と、書き換え漏れがないかの見直しに時間がかかります。前月に特別な値引きを入れていた場合、それが残っていないかも見なければなりません。

工程2 宛先と自社情報を確認する

取引先の正式名称、住所、部署名、担当者名。それに自社側の住所・振込先・登録番号。内容は毎月変わらないのに、毎月確認しているのがこの工程です。取引先が移転していないか、担当者が代わっていないかを気にしながら見るため、意外と時間を使います。登録番号そのものの調べ方はインボイス登録番号の確認方法で扱っています。

工程3 品目と数量・単価を入れる

今月何をいくら請求するかを決めて入力します。作業日報や納品書を見ながら拾う会社もあれば、契約書の月額を転記するだけの会社もあります。7工程のうち、ここだけは中身を決める作業です。

工程4 消費税を計算し、端数処理を確認する

数式が入っていれば計算そのものは一瞬ですが、行を追加したときに数式の範囲がずれていないかを毎回見ることになります。飲食料品などを扱っていて8%と10%が混ざる場合は、税率ごとの区分と端数処理の確認も必要です。この点は8%と10%が混在する請求書の書き方で詳しく整理しています。記載事項そのものの抜けが不安な場合は適格請求書に必ず書く6項目もあわせてご確認ください。

工程5 PDFにして、ファイル名を付ける

印刷範囲がずれていないか、2ページに割れていないかを見てからPDFにします。ファイル名は担当者ごとに書式が違いがちで、後から探せなくなる原因になります。

工程6 メールに添付して送る

件名を書き、本文を書き、添付し、宛先を確認して送ります。誤送信が取り返しのつかない工程なので、慎重になるぶん時間がかかります。件名とファイル名の型は請求書をPDFで送るときの件名・ファイル名の型にまとめました。

工程7 控えを保存し、発行台帳を更新する

共有フォルダに保存し、発行済み一覧に1行足します。ここを飛ばすと、翌月に「先月の番号はどこまで使ったか」が分からなくなります。番号の重複と振り忘れが起きる理由は請求書番号の付け方で扱っています。

月20通を発行している会社を想定して、工程ごとの目安を並べると次のようになります。

工程20通あたりの目安
1 複製と、日付・番号の書き換え100分
2 宛先と自社情報の確認80分
3 品目・数量・単価の入力100分
4 消費税の計算と端数処理の確認60分
5 PDF化とファイル名付け60分
6 メール送付80分
7 控えの保存と台帳の更新40分
合計520分(約8時間半)

実際には途中で電話が入り、金額の差し戻しも起きるため、体感としては「丸一日つぶれる」になります。この数字は品目の複雑さと通数で大きく変わるので、自社の場合を測ってみることをおすすめします。ストップウォッチで1通ぶんだけ測り、通数を掛けるだけでも、思っていたより大きい数字が出るはずです。

どこが自動化できて、どこは人がやるべきか

線引きの基準は単純で、すでにどこかに書いてある情報を書き写す作業は機械に渡してよい今回だけの判断が要る作業は人が残す、の2つです。

機械に渡してよいもの

工程渡してよい理由
宛先・自社情報・登録番号の転記一度登録すれば内容が変わらない。人が打つほど誤字が増える
請求書番号の採番「最後に振った番号を人が覚えている」前提そのものが事故のもと
消費税の計算と端数処理ルールが決まっているため、判断の余地がない
PDF化と控えの保存形式が決まっている。保存場所を人が選ぶから散らばる

人が残すべきもの

工程人が見るべき理由
今月の品目と金額を決める納品の実態と突き合わせる作業で、請求書の外にある情報が要る
値引き・前受金・締め日のずれその月だけの取り決めであることが多く、型にはめられない
送る前の最終確認誤送信は取り消せない。金額と宛先だけは人の目を通す

「請求書を毎月自動化したい」と言われたときに気をつけたいのは、工程3を自動化しようとしないことです。毎月まったく同じ金額の請求だけであれば自動化の余地はありますが、実際には数量が動く取引先が混ざります。そこを機械任せにすると、間違いに気づくのが入金の突合のときになり、かえって手戻りが増えます。

自動化すると、時間はどう変わるか

転記・採番・計算・PDF化・保存を仕組み側に渡した場合の目安です。同じく月20通で並べます。

工程いまの目安渡したあと
1 複製と書き換え100分0分(複製をやめる)
2 宛先と自社情報80分10分(一覧から選ぶだけ)
3 品目・数量・単価100分40分(ここは残る)
4 消費税と端数処理60分10分(確認のみ)
5 PDF化とファイル名60分10分
6 メール送付80分40分(ここは残る)
7 控えの保存と台帳40分0分(一覧に残る)
合計約8時間半約1時間50分

減るのは、確認と転記に使っていた時間です。毎月10通前後で、品目が契約書どおりの定額中心という会社であれば、1時間前後まで収まります。逆に、毎月の品目を一件ずつ拾い直す業種では、工程3が残るぶん短縮の幅は小さくなります。

正直に書いておくと、次の作業は仕組みを入れても消えません。

  • 今月分の納品内容を確認して、請求する中身を決めること
  • その月だけの値引きや調整を反映すること
  • 送る前に、金額と宛先を人の目で見ること
  • 取引先ごとの送付方法(郵送指定・専用ポータルへの登録など)に合わせること

「請求業務がゼロになる」ことはありません。減るのは判断を含まない作業だけです。

エクセルのまま、今日から減らせること

すぐに何かを導入しなくても、運用の変更だけで削れる部分があります。効果が大きい順に3つ挙げます。

1 複製をやめて、白紙の雛形から作る

前月ファイルの複製は、前月の内容が残るリスクとセットです。金額欄と品目欄を空にした雛形を1つ作り、毎月そこから始めるだけで、工程1の確認時間はかなり減ります。

2 取引先の情報を1枚のシートにまとめる

取引先名・住所・部署・担当者を1枚に集め、請求書側はそこを参照する形にします。移転や担当者変更があっても直す場所は1か所です。工程2の「毎月確認する」をやめられます。

3 発行台帳を先に作り、番号はそこから採る

発行済みの番号・取引先・金額・発行日を1枚の一覧で管理し、番号は必ずその一覧を見てから振ります。複製時の番号引き継ぎによる重複が防げます。

この3つは費用ゼロでできます。まずここまでやってみて、それでも月末が終わらないなら、仕組みを変える段階だと考えてよいと思います。

エクセルで続けられなくなる境目

相談を受けていて、限界が来ていると感じるのは次のような状態のときです。

  • 発行が月10通を超え、月末の2日が請求業務でつぶれている
  • 作れる人が1人しかおらず、その人が休むと止まる
  • 「あの請求書はいくらだったか」を探すのに毎回5分以上かかる
  • 番号の重複や記載漏れで、取引先から差し戻された経験がある

逆に、月に数通で、担当者が複数いて、差し戻しも起きていないなら、いまの運用を変える必要はありません。通数と担当者の人数が増えたときに、エクセルの運用は先に壊れます。壊れてから直すより、月末が2日つぶれ始めた時点で見直すほうが楽です。


「ちくし請求書」は、この記事でいう工程1・2・4・5・7を引き受けるサービスです。取引先を選んで品目と金額を入れて保存すると、自社情報・振込先・登録番号が入ったPDFができます。請求書番号は保存時に自動で振られ、作った請求書は一覧に残ります。会計ソフトへの乗り換えは不要で、いまのエクセル運用と並行して試せます。メール送信機能は無いため、送付はこれまでどおりご自身のメールで行っていただく形です。月額1,000円(税込)の1プランのみで、機能制限はありません。サービスの詳細はこちら